筋ジスと

筋ジスのこと、たまには筋ジスと関係ないことも。思うままにつらつらと。

悲劇のヒロイン期

今日は難病になったり障害者になった人が1度は経験するであろう悲劇のヒロイン期のお話です。

 

それまで健康だと思っていた人が突然体が思うように動かなくなると、不安や悲しい気持ちでとても落ち込みます。多分。筋ジストロフィーになった人でその後うつ病になってしまう人も少なくないようです。

 

そして私にもありました、メソメソ、クヨクヨ、シクシクしていた時期。具体的には体に異変を感じ始めた22歳の夏くらいから、確定診断がついた23歳の夏くらいまで、約1年間、悲劇のヒロインモードになっていました。1年間ずーっと落ち込んでいたわけではなく、もちろん笑って過ごした日もありますが、事あるごとに病気のことを考えていました。

 

「私の体がもう元に戻ることはないのか・・・はぁ(可哀そうな私)」

「もう結婚もできない・・・はぁ(可哀そうな私)」

「誰かに迷惑かけながら生きていくなんて耐えられない・・・はぁ(可哀そうな私)」

「今までの趣味も諦めなきゃ・・・はぁ(可哀そうな私)」

「今まで結構まじめに生きてきたのにな・・・はぁ(可哀そうな私)」

「障害者か・・・はぁ(可哀そうな私)」

 

病気をきっかけに仕事を辞めていたので、この先どうやって食べていくのかという不安も大きくありましたし、そもそも確定診断がつくまでは何の病気かわからなかったのであとどれくらい生きられるのかとか寝たきりになるのかとか、考えれば考えるほど不安が増していく状況でした。

 

でもこれを当時誰かに相談したわけではありません。友達はみんな社会人で忙しそうでしたし、友達とはこれからも仲良くしたかったので負担をかけるようなことはしてはいけないと強く思っていました。遺伝性の疾患か?という疑いもあったので家族に愚痴を言うと家族を責めているようになってしまうし。彼氏がいたら彼氏に相談していたのかもしれませんが、そんなものはいなかったし、もしいたとしても「病気の私なんかとは別れて他の誰かと幸せになって」とか言って更なるヒロインを演じそうです。で、仕方がないのでメモ帳に日記をつけて不安な気持ちを書いていました。そして、もし、これで本当に難病で余命〇年とか言われたら出版して一儲けしよう♪と思っていました。(もっと真剣に落ち込め!って感じですが)

 

それに心の中が不安ばかりだとしても、ニコニコして淡々と病気のことを話して「大丈夫だよ」って言っていると周りが「あの子はまだ若いのに難病なんて可哀そう。でも明るくて前向きでえらいわ~」とか言って更に悲劇のヒロイン気分を盛り上げてくれます。それに浸るのも悪くないです。下手したらちょっと快感なくらい。

 

しかし、結局23歳の夏、「あなたは顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーです。進行性の難病なので悪くなることはあっても良くなることは基本的にはありません。治療法は今のところありません。遺伝性なので子どもには50%の確率で遺伝します。もし遺伝すれば家族間では症状が似る傾向にあるので、恐らくあなたのように20歳前後で発症するでしょう。生命予後は比較的良好なのであなたの親族のように平均寿命程度は生きられる可能性が高いです」と言われました。

 

おう、まじかと。このまま進行し続けるのに80歳くらいまで生きるのかと。どちらがいいかという話ではありませんが、もし余命3年とか5年って言われたら残りの人生は好きなことだけをして生きるつもりでした。でも80歳まで生きるなら障害を抱えながら生活費を稼がないといけないし、家に引きこもって鬱々と暮らすには長すぎる!!と思って、悲劇のヒロインモードから少しずつ脱していきました。

 

まずは、生きていくための職探しから。そして家事の練習も少しずつ。今までできていたことができなくなっていることはショックですが、何とか工夫してできるようにならないと生きていけませんから、あと60年も。ひぃぃーーー。

 

そして悲劇のヒロイン期には「まず日記を出版して一儲け、そして夕方のワイドショーか24時間テレビで特集されて反響を呼び、その後は各地で講演活動、さらに私の実話を元に美人女優で映画化で金銭的には・・むふふ」と思っていたのですが、私はすぐ死ぬわけでもなく、美人でもなく、何か特出した特技があるわけでもない。立派な志があるわけでもないし、障害も見た目でちょっと分かりにくい(まだ車椅子とかじゃないし)。と気づいてしまったので、それからはコツコツ仕事をしながら、苦手な家事もしながら、日記は書くのを止めて、10年ちょっと生きています。

 

私は基本的に自分大好き人間なので(なのに自分に自信がないという矛盾)、悲劇のヒロイン期も嫌いではないのですが、その状態が幸せとか楽しいかって言われると違う気がするので、悲劇のヒロイン期にはまって抜け出せなくて苦しくなってしまったときは、無理やりでも社会と接点を持ちつつ、ちょっと忙しくするのがいいと思います。

 

もう今なんて、仕事しながら(今は育休中だけど)、子育てしながら、家事しながら、資格取得の勉強しながら、な毎日で忙しすぎて病気のことをゆっくり考える時間がないですから(いいのか悪いのか・・・)