筋ジスと

筋ジスのこと、たまには筋ジスと関係ないことも。思うままにつらつらと。

職場に病気や障害を説明するのはなかなか難しい問題と出世欲が湧いてきたかもしれない話

今日は、障害者雇用専門のエージェントを使って、障害者採用枠で転職活動していた私が、それでも自分の状態を説明するのはとても難しいというお話です。相手が私に障害があることは承知で、理解して配慮をしてあげようという姿勢であっても、全てを理解してもらうことは難しく、また、実際に働いてみないと分からない事も多いというお話。

 

私は筋ジスが分かってからは障害者であることをオープンにして就活しています。手帳の等級でいうと4級なので重度の障害という訳ではないのかもしれないですし、一般就労もできるかもしれませんが、無理をしたくないのです。顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの特性上、進行が緩やかで、呼吸筋や心筋など生命維持に直結する筋肉が比較的最後まで保たれることから、長く働いて収入を得る必要があるので仕事を続けられなくなるという状況が一番怖いからです。細々とでも長く稼ぐことが重要です。

 

で、筋ジストロフィー自体の説明は割と簡単です。「筋肉がだんだん減っていってしまって力が弱くなり、できない動作が増えます。進行性の病気なので今できていることでも将来的には出来なくなる可能性があります。治療法は今のところないので、病院には経過観察のために半年に一回通っていて、この日は有給をいただきたいです。知的障害は伴いません。」だいたいこのように説明すると、相手も「分かりました」と言ってくださいます。

 

問題は就活で必ず聞かれる「できること、できないことを教えてください。」という質問です。(スキルではなくて機能的な話)顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの場合、全ての筋肉が均等に減っていくわけではなく、例えば私の場合、上腕二頭筋はすごく弱くてほとんど動かないけど、上腕三頭筋はかなり使えるという事があります。また左右差もあります。なので一概に力仕事ができないという訳でも軽作業なら得意という訳でもありません。重たいドアも押すのは大丈夫だけど、引っ張るのは難しかったりするし、机の上で紙に字を書くことは出来るけど、立ってメモを取ったり、ホワイトボードに字を書くことは出来ません。腕を空中で保てないので、名刺交換や握手も苦手ですし、お客さんにお茶を出すのも難しいです。椅子に座って、机に肘をつけば電話で会話できるけど、立ったまま電話を耳まで持ってくることは出来ません。でも壁に寄りかかって肘を壁で支えればできます。

 

このあたりのニュアンスを伝えるのが難しく「空中で腕を動かすのが苦手です。手首に30キロずつおもりがついている感じでしょうか。関節が麻痺しているわけではないので、支えがあれば動かせますし痛みもありません。ですが疲れやすいので、できる作業であっても長時間していると動きづらくなったり、翌日に疲れが残ったりします。脚は比較的筋力が残っているので、通勤は問題ありません。筆記やPC作業は腕が疲れやすいですが、特別な器具はなくても作業できます。」くらいの説明をしています。

 

でも実際に働いてみると、「あ、これ無理だわ」とか「あ、これ出来るけどキツイわ」とかいうことがたくさん出てくるのです。

 

以前働いていた百貨店の一般事務の場合、力仕事は大変だろうと配慮してくださっていたのですが、週に1日、朝イチでオフィス清掃をする日がありました。15分~30分くらいの短時間なのですが、これがきつかったのです。なぜか女性のみが雑巾で棚を拭いたり、掃除機をかけたりしなければならず(男性は自席のPCのキーボードの埃取りとかしてて。これには未だに納得いってないです)雑巾を絞るのも拭く動作もうまく腕が動かせず、掃除機を他フロアに借りに行くのもかけるのも難しくて、結局いまいち絞れていない雑巾で棚を撫でてるみたいな感じで、肩身が狭かったです。

 

今の職場に転職するとき、人事担当者に「掃除が苦手です。雑巾がけは難しいです。お茶出しも苦手です。」と伝えたところ「うちは全て外部の業者に委託しているので掃除はしなくて大丈夫です。お茶出しは受付の方がします。」と言われとても安心したのを覚えています。

 

では今の職場が全く問題ないかというとそうでもなく、私はアシスタントで一番下っ端なのですが、下っ端ゆえコピー取りとか書類のスキャンを頼まれますがコピー取りが実は苦手です。(できなくはないけど疲れが残る系)全部サイズが揃ってて流せるやつならまだいいのですが、色んなサイズが混じってて、付箋とか貼ってあって、カラーにしなきゃいけないのも混じってて、さらにホチ止めされてる書類もあってとかだと、毎回上の蓋を持ち上げて書類を置いてボタン操作をしてという作業が必要で、もう腕に乳酸が溜まりまくってプルプルしてきます。でもこれは出来ないわけではないので断りづらいというか断れません。また上司と外出する場合、上司が基本早歩き移動の人だと付いていくのが大変で、途中乗り換えや信号のタイミングによって走られるともう無理です。重い荷物を持ってもらっていたりする中で、更に下っ端から「早めに出発しませんか?」とか「タクシー使いませんか?」とか言い出せるはずもなく、ただ必死に食らいつくのみです。他にも部署のみんなでランチとか飲み会があった場合、私は下っ端のくせに料理を取り分けることが難しいです。以前、焼き肉に行ったときはとても偉い方に肉を焼かせた上で取り分けてもらい、居酒屋に行ったときはこれまたとても偉い方に鍋を取り分けてもらいました。テーブルにポットが置かれてお茶やお水がセルフサービスの時も、本当は私がやるべき立場ですが、誰かにやってもらっています。それから最近職場ではペーパーレス化が進んでいることもあり、研修や会議にはPCとiPhoneを持参するのですが、それを持って他の部屋に移動するのが大変です。(無駄に途中重たい扉がいくつもあったりして!!)みんなが階段で移動するのでついて行きますが心の中では「エレベーターで行きたい、例え1階上がるだけでも!」と思っています。

 

職場の方々はとてもいい人たちなので、ちゃんと説明すれば、じゃあ大量コピーは頼まないようにとか、移動はゆっくり目でなるべくエスカレーター、エレベーターを利用しようとか、配慮してもらえると思うのですが、上記はほんの一例で、こんなちょっとした不都合がいくつもいくつもあるのでその都度お願いするのも心苦しく逆にストレスだったりして、ちょっと無理してできることなら頑張るか!となってしまいます。また黙ってても時間が解決してくれることもあります。例えば今まで契約書の大量の製本をお願いされることがあって特に社判を押すのが力が必要で苦手だったのですが、電子化に伴ってリアルな押印がなくなりました。(PC上で押印する)

 

色々考えてみて思うことは、職場で大勢の人と関わる中で全ての人に状況を理解してもらって配慮してもらうのは難しいし、私自身細かいことをすべて説明するのは不可能です。その日によって体調の変化もありますし。でも、出来なくて心苦しいと思っていることの結構大きな部分はポジションの変化によって解決できる気がしています。つまり簡単に言うと出世です。自分が上司なら機能的に難しい作業は部下にお願いできるし、外出も自分のペースで歩けますし、食事も店員がサーブしてくれる店を指定すればいいのです。今まで、難病で、障害者で、ワーキングマザーで、知識も資格もスキルも不十分で自信がなくてアシスタントが気楽でいいやと思っていたけど、もうちょっと頑張ってみようかなっと思い始めた今日この頃です。今が育休だからのんきにこんなことを言っていますが、復帰したら仕事きつすぎて弱音を吐くかもしれません。でもダメだったらまたアシスタントに戻るなり、転職するなりすればいいと思うので、とりあえず勉強して、まずは1つ上のポジションを目指そうかなと思います。(実際に人を使えるようになるのはその更に2つくらい上のポジションでものすごい頑張ってもきっと15年後くらい・・・)でも上に上がったら上がったで、今度はクライアントとのやり取りとかで悩むんだろうなぁ。名刺交換とかお辞儀とか接待飲み会とか筋ジス的に苦手です。